中四がんプロ活動報告

H.Lee Moffitt Cancer Centerにおける研修報告

研修期間 2013年1月28日~2月1日
参加メンバー 山口大学 飯田 通久(医師)、田中 芳紀(医師)
報告者 山口大学 飯田 通久
研修目的 米国における消化器がん治療の現状の視察
研修内容 手術や消化器がんの外来見学、キャンサーボードへの参加

今回、がんプロFD研修の一環として、米国H. Lee Moffitt Cancer Center(以下モフィットがんセンター)への研修の機会を得た。山口大学から私、消化器腫瘍外科学の飯田通久と第3内科の田中芳紀先生が研修に参加した。1月26日に日本を発ち、テキサスのダラス・フォートワース国際空港を経由して、モフィットがんセンターのあるフロリダ州タンパへ到着した。

1日目(1月28日)

9:00~10:00

モフィットがんセンターへ到着。
 身分証明書を作成、白衣の貸与。
 オリエンテーションの後、研修期間中のスケジュール表を手渡された。

10:00~16:30

(外科 飯田) 消化器がん外来(GI clinic)見学

 腫瘍内科医(medical oncologist)であるDr. Richard Kimの外来を見学した。外来担当のDr.はPhysician Staff Core Roomで患者の画像、データ閲覧を行っており、診察の準備が整ってから患者が待つ診察室に訪問するという形式をとっていた。
 Physician Staff Core Room(写真1)は外来における医師控室のような部屋で、消化器がん外来であれば腫瘍外科医、腫瘍内科医、消化器内科医、放射線医、Physician Assistant(以下PA、『*Physician Assistant(PA)とは』参照)などが集まって症例の検討や電子カルテの記載などをしている。ここでは、気軽に各科の医者同士がコンサルト、discussionしており、具体的な治療方針が決定されていた。

Physician Staff Core Room
写真1:Physician Staff Core Room

Dr. Kimはoncologistのためか、ほとんど画像診断は自ら行わず、diagnostic radiologistのレポートのみで診察していた。患者にはレポートのみ提示し、画像は全く見せていなかった。滞在中、3名のDr.の外来診察を見学したが、いずれのDr.も患者にレポートを見せるのみで実際の画像は提示していなかった。日本ではあまり行われていないが、診察後には画像診断のレポートを患者に手渡していた。

診療記録は電子カルテであるが、診察後にPhysician Staff Core Roomでvoice recordingを用いて行っていた。EUS(超音波内視鏡検査)、PETなど検査のオーダーや再診の予約などは口頭でPAに依頼。検査のオーダーや電子カルテの記載などの業務が効率化、分業化されており、日本に比べDr.の仕事が軽減されている印象を受けた。

*Physician Assistant(PA)とは

Physician Assistant (PA)は、医師の監督の元に医療行為を行う資格を有し、医師が行う医療行為の8割方をカバーすることができると言われている医療従事者。消化器がん領域ではstaff一人一人に担当PAがついており、問診、診察、投薬、検査オーダー、手術の前立ちまで医師の許可のもとに行っていた。このPhysician Assistantのおかげで医師の業務は軽減され、効率化されていた。

1例目:
切除不能胆管細胞がんで化学療法中(GEM・OXA)。腫瘍マーカーは低下してきたが、PETでSUV注1)取り込みが上昇しており、化学療法の続行か、変更について患者と相談。現行治療続行し、2ヶ月後に再評価のPETを行なうとのこと。
注1) 画像で測定した腫瘍や臓器の放射濃度÷(放射線投与量÷体重)

2例目:
大腸がん肝転移で化学療法(FOLFOX)施行していた。治療効果の評価はSD末梢神経障害あり。副作用の問診は診察前にPAによりすでに行われていた。

3例目:
大腸がん肝転移にて化学療法中。経過良好。

4例目:
新患 肝細胞がん(HCC) 15cmのHCCで nonB、nonC、nonAlcholic。画像は見られなかったが、サイズが大きく切除不能で移植も適応外。化学放射線療法を勧めていた。日本より肝移植についてのハードルが低く、医師も患者も標準治療として認識している印象であった。

5例目:
新患 膵頭部がん 3cmで門脈浸潤あり。遠隔転移あり。切除不能膵がんとして化学療法(GEM)を説明。副作用に関しても簡単に説明。因みに日本では認可されていないが、FOLFIRINOXは膵がんの3割程度に行われているとのこと。

6例目:
新患 膵頭部がん 前医で診断され、胆道ステント留置後。門脈に広範囲に接しており、borderline resectable(切除可能境界病変)。手術不能かどうかEUSとPETを行い、検討するとのこと。日本であれば切除適応であり、手術適応に関しての若干の違いを感じた。

2日目(1月29日)

9:00~16:30

(外科 飯田) 消化器がん外来(GI clinic)見学

腫瘍外科医(surgical oncologist)であるDr. Pamela Hodulの外来を見学した。
 Dr. Hodulは膵腫瘍、特にPNET(膵神経内分泌腫瘍)を専門とする女性外科医。個人で年間、60例の膵切除を行っていて、施設全体では年間100例以上とのこと。Dr. Hodulはfellow 2名、resident 1名、学生1名、PA 1名からなるチーム(写真2)で患者を診ていた。写真3は外来診察室。

新患、フォロー患者に関わらず、fellow以下がまず問診、診察、画像評価、治療計画立案を行い、Dr. Hodulとdiscussion。その後にDr. Hodulが患者診察および病状説明していた。その後にfellow以下が診察内容についてレポートを作成、PAに検査予定、次回受診予定を口頭で伝えていた。またmedical oncologistに比べ、外科医だけに画像診断をしっかりしていた印象であった。

チーフを中心としたチームで外来診療も病棟業務も行っているとのことで、このあたりは日本の外科と似ている状況であった。また、診断、術後フォローにPETを多用している印象があった。

Dr. Hodulのチーム
写真2:Dr. Hodulのチーム
外来診察室
写真3:外来診察室

1例目:
新患 慢性膵炎中に発生した膵石及び膵体尾部嚢胞。過去に膵炎の既往あり。ERCPおよび尾側切除について説明していた。

2例目:
フォロー患者 胃がん術後2週。審査腹腔鏡、細胞診でnegative→切除となったが、大網に播種疑う結節あり。MAJIC trialに準じ術前・術後ECF療法行うとのこと。

3例目:
新患 巨大な肝腫瘍 FNH疑い。CCCの可能性も否定出来ず。一旦biopsy(生検・生体組織検査)および腫瘍マーカー、ウイルスチェック。

4例目:
フォロー患者 胃NET typeⅢ 高齢でありwedge resection後。近傍にリンパ節転移あり。

5例目:
フォロー患者 大腸がん多発肝転移 Folfox+Avastin中。両葉multiple 6-7個あった転移がPETでSUV取り込み1箇所のみ残存に。GIカンファレンスで治療計画相談するとのこと。

6例目:
フォロー患者 S状結腸がん術後吻合部狭窄で上流結腸拡張あり。良性狭窄疑い、あっさりcolostomy(人工肛門)作製を選択、IC(インフォームド・コンセント)していた。患者も比較的あっさり承諾。

7例目:
新患 巨大なGIST 胃原発疑い15cm大。一旦グリベック使用して縮小させてからOpとのこと。

8例目:
フォロー患者 IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)術後high grade dysplasia PD後6年。PETでフォローしていた。多臓器がんの発見にも良いとのこと。

9例目:
新患 腫瘤形成性膵炎疑い。アルコール多飲、慢性膵炎がbaseにありdouble duct sign(膵・胆管の両方の狭窄)陽性。EUSでbiopsy精査予定。

10例目:
新患 膵頭部がん 門脈に広範に接している。その他非治癒切除因子なし。モフィットでは、上記はborderline resectable(境界型切除可能)で術前治療(GTX:GEM+DOC+Capecitabineに加えradiation)を行うとのこと。GTX3サイクルで評価されなければ3サイクル追加とのこと。

11例目:
新患 膵頭部原発NET多発肝転移(20個以上)、リンパ節転移あり。過去にAfinitor(アフィニトール)、Sutent(スーテント)使用歴あり。コントロール不能で紹介。Dr. HodulはPNETに対する積極的な減量手術を推奨しているが、さすがに外科的介入の余地なし。診察前の画像検討でmedical oncologistのチームへ担当が変更。モフィットではNET borderline resectable → Xeloda(ゼロ―ダ)+ temodar(テモダール)、NET unresectable → Afinitor、STZ(ストレプトゾトシン)+ 5FU(フルオロウラシル)、Xeloda+temodarなどを施行しているとのこと。

3日目(1月30日)

7:00~16:30

(外科 飯田)手術見学

患者:腹部食道がん(腺がん)に対する胸腔鏡下および用手補助下腹腔鏡手術食道切除術
Dr. Kenneth Meredithの腹部食道がんの胸腔鏡手術を見学した。術前化学療法後症例であるが、米国ではt2以深の下部食道腺がんに術前化学療法施行しており、70%程度の症例で術前化学療法を行っているとのこと。手洗いはアルコール擦り込み。消毒、ドレーピングはNsが施行。Opはチーフとfellowの2人で施行。

手術操作(写真4)

腹部操作(用手補助下腹腔鏡手術)

右肋弓下に7cm Gel Port留置し、術者の左手および 5 or 12mmポート1本を挿入。臍左側に5mm cameraポート。左側腹部5mmポート、助手のworking portで助手はカメラ持ちながらリガシュアーを使用。網嚢を小開腹よりopenし、P-ringにvotox injection(胃内容排出遅延予防)、HALS(用手補助下腹腔鏡手術)で大網、胃脾間膜切離。経横隔膜裂孔的に下部食道剥離。左胃動脈はGIA(自動縫合器)にて切離。

5cmの大彎側胃管作成。胃壁に向かい小網の切離(GIA使用)。その後、切除側胃と胃管の間をエンドステッチで連結。ペンローズを食道に巻き、ステープラーでループ化。腸瘻を作製し、腹部操作終了。小開腹創は両端からループ針で2層縫合、皮膚は真皮縫合。

胸部操作(胸腔鏡手術)

体位変換し、左側臥位。右胸腔アプローチ。第6肋間から5mm camera port挿入。第8肋間からGel port。第3肋間の5mm助手用working port。胸膜切開後、奇静脈はステープラーにて切離。食道をペンローズ牽引しながら剥離。食道に添うように剥離。のちに縦隔リンパ節をpick upしていたが、最後まで右反回神経は露出されず。リンパ節と切除標本をunblock(一括切除)に摘出することはしていないと。腹部食道がんとはいえ、郭清はやや甘い印象。Roboticでは縦隔の郭清は繊細に出来るとのこと。食道切離は胸腔内でステープラーにて行い、標本摘出。標本を持って病理へ。病理医と一緒に肉眼的に断端を確認後、再度手術室に戻り清潔に。再建は胸腔内での吻合。OrVilのhead 25mmを口腔内から挿入。Gel Port部から本体挿入。DST吻合。余剰胃管はGIAにて切離。リークテストで問題なし。胸腔内吻合で胃管には充分距離的な余裕あり、血流にも十分注意して吻合していた。リーク率は2%!胃管側断端はクリップにて補強。手術時間は体位変換込みで5時間。術後は挿管のまま集中治療室へ。1週間で退院とのこと。

手術操作
写真4:手術操作
感想

Dr. Meredithは常に冷静沈着で、他のスタッフをうまくコントロールしながら円滑に手術を行っており、手術技術も非常に高いと感じた。しかし、腹部食道腺がんあることを考えても、モフィットにおけるリンパ節郭清は日本の徹底したリンパ節郭清と比較すると物足りなく感じられた。またポートクリーナー、カメラクリーナーなど日本であまり見られないディスポ器具の使用や(絶対必要ではないがあると便利だと思われる)、エンドGIAなどの高価な医療材料もふんだんに使用しており、手術をスムーズに終わらせるためにはコストは気にせず、便利なものは積極的に使用している印象。カメラはOlympus社製であったが、他の医療器具でほとんど日本製品はなかった。町を走っている車はほぼ半数が日本車であったが、医療器具に関しては米国の足元にも及ばないか?ロボット手術は日程が合わなかったため見学できず、非常に残念であった。

4日目(1月31日)

7:00~9:00

GI tumor board(写真5)

参加者は腫瘍内科医、腫瘍外科医、消化器内科医診断、病理医、放射線科医など30名程度バラバラと集合。食事取りながらの参加者もあり。チーフがそれぞれの外来で治療方針、診断に苦慮する症例を中心に提示。計14例の紹介あり。多くの参加者が自由に発言しているが、1例5~10分程度でスイスイ進んでいた。

GI tumor board
写真5:GI tumor board

9:00~13:00/15:00~16:00

(外科 飯田) 消化器がん外来(GI clinic)見学/Dr. Meredithの外来見学

Dr. Meredithは上部消化管手術および腹腔鏡手術を専門とする外科医。ロボット手術のspecialistでもあり、2012年度の食道がん手術は100例程度で、ロボット手術が約半数、胸腔鏡2割程度と低侵襲手術を中心に行っているそうだ。食道がんのロボット手術は約4年前から導入、比較的早期の症例から始め、現在はT3まで適応を拡大しているとのこと。手術時間は平均7時間30分程度。2012年度からはロボットでの膵頭十二指腸切除術も行っており、1か月4例程度のロボットによる膵頭十二指腸切除術を行っているとのこと。Dr. Meredithは個人的には画像の繊細さ、鉗子自由度の高さなどの点でロボット手術は胸腔鏡手術より優れていると感じているそうだ。da Vinciはモフィットに2台導入されており、消化器以外にも泌尿器科、呼吸器外科、婦人科がロボット手術を施行しているとのこと。

1例目:
新患 Barret食道に発生した下部食道腺がん。EMR施行歴あり。Robotic(ロボット手術)もしくはThoraco(胸腔鏡手術)での手術説明。手術説明ではiPadのmedical drawを使用して概略説明。合併症はleakとDGE(胃内容排出遅延)を説明。

2例目:
再診患者 IPMN分枝型でRobotic DP術後。術後病理はIPMA。創は臍横に4cm一カ所、ポート4箇所。85歳と高齢であるが、積極的に手術している印象。

3例目:
新患 下部食道がんと腎がん。狭窄著明で他院で化学放射線療法、胃瘻造設されていた。進行がんだが切除可能であり、化学放射線療法後にOpとのこと。進行がんは基本的に術前化学療法→手術→術後化学療法。術前化学療法の奏功率は完全奏功4割、部分奏功3割。

4例目:
再診 食道がん胸腔鏡手術後。

5例目:
新患 MENⅡAで左副腎腫瘍 PET集積なし。一旦、MRIで精査。

6例目:
新患 直腸がん、S6に同時性肝転移あり。原発巣切除術→肝切除を2期的にRoboticで行う予定。

13:00~15:00

(外科 飯田) 院内見学

元々はH. Leeというお金持ちが80億円出して22年前に作った病院。急激に規模を拡大しており、現在は全米のCancer Centerとしては3番目の規模だそうだ。250人程度の医師、職員は4400人で病床数は250床程度。院内には患者用図書室、Art room、Kids roomなどがある。また、手術や処置前の患者や手術中の家族が待機できる非常に広い待合室があった。個室複数+共有スペースあり、リラックス出来そう。当院にも是非作って欲しいと感じた。

研究棟は5階建てで100m×15mほどの広い実験室(写真6)が各階2部屋ずつ。色んなラボが横並びに同居している。ラボ間の垣根をなくしてラボ同士で協力し易いようにと考えての構造とのこと。ここでは120人ほどの研究者が基礎研究を行っているそうだ。

研究棟の広い実験室
写真6:研究棟の広い実験室

5日目(2月1日)

7:00~16:30

(外科 飯田)手術見学

Dr. Mokenge P. Malafaの手術見学(写真7)

下部胆管狭窄(下部胆管がん疑い)に対する膵頭十二指腸切除術  BMI:30以上

Dr. Malafaは肝胆膵外科を専門とする外科医で消化器グループのchairである。陽気で非常に気さくな方でこちらのまずい英語にも丁寧に対応してくださった。
 通常であればロボットによるPD(膵頭十二指腸切除術)の適応であるが、開腹手術歴がありロボット手術の適応外で開腹でのアプローチとなった。膵がんであってもBorderline resectable(切除可能境界病変)以外はロボットPDの適応にしている。また幽門輪温存膵頭十二指腸切除も行っているが、本症例は肥満があり、PDを行うとのこと。PD後平均術後在院期間は7~10日。

Dr. Mokenge P. Malafaの手術見学
写真7:Dr. Mokenge P. Malafaの手術見学
手術操作

上腹部横切開で開腹(開腹はfellowとPAが2人で行っており、腹腔内操作はチーフとfellowの2人で施行)。網?open。Kocher授動。Treitz靭帯部で空腸切離。胃の切離。SMV露出。GCT切離(結紮切離)。GDA切離(結紮切離)。門脈前面のトンネリング。膵切離(ハーモニックスカルペル)。胆嚢剥離。総肝管切離。SMV周囲剥離。膵頭神経叢Ⅰ・Ⅱ部切離(自動縫合器:echelon)し標本摘出。再建はChild法。膵空腸吻合は2列吻合。膵前壁から4-0プロリン貫通後、空腸後壁長軸、膵後壁から貫通。これを4針ほど行い外層縫合とす。膵管は2mm、ステント挿入後4-0 vicrylで全周4針duct to mucosaで縫合。Lost stentは固定せず。PF率は25%とのこと。肥満症例が多いことを考えると、比較的良好な成績であろう。胆管空腸は結節縫合で全12針。胃空腸は結腸前ルートで自動縫合器2回使用した側々吻合。ドレーンは側孔空いたペンローズ型2本を左側より閉鎖式で。1週間で抜去とのこと。手術時間は7時間30分。

感想

症例はかなりの肥満症例であったが、肥満症例に慣れている様子でfellowと2人で滞りなく手術を遂行していた。1.横切開。1.ヘッドライト着用。3.オムニリトラクター(開創器)を巧みに使用して術野を展開。4.リガシュア―、サージカルクリップを多用して結紮を極力減らす。5.術野深いため腹腔鏡用の自動縫合器を使用する。など、肥満手術における工夫がいくつか見られた。またモフィットは膵切除症例が年間100例以上のhigh volume centerであるが、リンパ節郭清はD1程度しか行われておらず、日本と米国でのリンパ節郭清に対する考え方の違いを認識させられた。

16:30~16:45

ハンニバル玲子さんの計らいでChaplainの方(写真8)のお話を伺う機会を得た。Chaplainは宗教的なアプローチで患者のメンタルケアに関わる医療職である。精神的に不安定な患者のメンタルケアだけでなく、亡くなった患者のご家族に対してもケアをされるそうである。モフィットは患者のほとんどががん患者であることもあり、6人のChaplainがさまざまな宗教のがん患者さんに死を穏やかに受け入れられるような手助けをされているとのこと。日本ではChaplainの役割を臨床心理士や精神科医が行っていると思われるが、より専門的、専従的にアプローチできるChaplainは意義のある職種だと感じた。

Chaplainの方と
写真8:Chaplainの方と

まとめ

モフィットでの5日間のがんプロ研修で学んだことは、日本と米国のがん診療システムおよび手術に対する考え方の違いである。日本では内科、外科、放射線科といった診療科区分がなされており、消化器がんの診療は通常、放射線科、内科での診断→放射線科、内科、外科での治療、といった流れで行われている。一方、モフィットにおいては消化器がん診療科という大きなDepartmentの中で腫瘍外科医、腫瘍内科医、消化器内科医、放射線医が初診時から緊密に連携を取り、discussionしながら診療が行われていた。当院でも肝臓、消化管、胆膵カンファレンスなどで各科が症例に対し情報交換をする場はあるものの、より各科の連携を深めることがさらなる診療のレベルの向上につながると感じた。また手術手技に関しては、やはりリンパ節郭清という面では徹底した郭清を行う日本とあまりリンパ節郭清に重点を置いていない米国に大きな差を感じた。米国では手術をあくまで集学的治療の一つとして位置付けていること、医療保険制度の違いにより術後合併症をできる限り少なくする必要があること、肥満症例が多いことなどの事情が関係しているのかもしれない。

モフィットでのがんプロ研修で得たこれらの知見から、見習うべき点(米国で医療で優れていると考えられた点)は取り入れて今後の診療にいかしていきたいと思う。しかし、5日間の研修では十分に理解できないことも多く、医療制度の違いもあるため、学んだことを直ちに実行に移すことは難しいと感じている。また教育面では、今回の研修で知り得た日本と米国のがん診療システムおよび手術における違いを医学生、大学院生を中心に広く情報提供して行きたいと思う。

最後にこのような機会を与えてくださった中国・四国広域がんプロ養成コンソーシアムの皆様、消化器病態内科学 坂井田教授、消化器腫瘍外科学 岡教授、がんプロのスタッフの方々に深謝いたします。

文責 山口大学大学院医学系研究科 消化器・腫瘍外科学 飯田 通久