中国・四国広域がんプロ養成コンソーシアム

文部科学省 平成24年度 がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン 採択事業

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H.Lee Moffitt Cancer Centerにおける研修報告

研修期間:2010年2月8日~2月12日

参加メンバー
山口大学 岡本 健志(医師)、鈴木 伸明(医師)
研修目的
米国における消化器癌治療の現状を視察するため
研修内容
内視鏡治療現場や外来の見学、手術や外科外来の見学、キャンサーボードへの参加

中国・四国広域がんプロ養成プログラム FD事業による海外派遣研修報告書

タンバ国際空港(写真1)

今回、がんプロFD研修の一環として、米国H. Lee Moffitt cancer center(以下モフィットがんセンター)への研修の機会を得た。山口大学から第一内科の岡本健志と消化器・腫瘍外科学の鈴木伸明が研修に参加した。 2月7日に日本を発ち、ワシントンD.C.のダレス国際空港を経由して、モフィットがんセンターのあるフロリダ州タンパへ入る予定であったが、アメリカ東部の記録的な寒波と重なり(写真①)、ダレス空港が閉鎖されてしまったため、急遽経由地をシカゴへ変更しタンパへ入った。幸い予定通り2月7日に現地に入ることができたため、大きな日程の変更なく研修を受けることができた。

2月8日(1日目)

9:00 ~

Hannibal Reikoさん(日本人)(写真②)

モフィットがんセンターへ到着。ロビーで待ち合わせの予定であったが、研修のマネージメントをしてくださっているK. Nzuzi Gosinさんがこの日休暇を取っていらっしゃったようで、しばらくどなたも来られなかった。Gift shopで働いておられる、Hannibal Reikoさん(日本人)(写真②)が声をかけてくださり、連絡を取ってくださった。

9:30~10:00

簡単なオリエンテーション

10:00~16:00

(内科 岡本)内視鏡部門でDr. James S Burthelの内視鏡検査、および処置を見学

1例目:Barrett食道に対するcryoabration。食道腺癌に対する化学放射線療法後の方に対して、残存したBarrett食道に対する治療として、cryoabrationが行われていた。

特殊なデバイス(写真3)

これは、特殊なデバイス(写真③)を用いて、内視鏡直視下に、液体窒素ガスを病変にかけ、組織を凍結させる治療法である。食道上皮を凍結させ、組織を破壊することにより、Barrett食道を覆っている円柱上皮を元々の扁平上皮へ変化させ、治療する。本邦では当然行われていない治療法で、米国においても始まったばかりの治療法であるとのことであった。今まで、Barrett上皮に対する治療法として、Photodynamic therapy (PDT)やArgon plasma coagulation(APC)が報告されているが、従来の方法と比べ、cryoabrationは狭窄等の合併症が少ないのがメリットであるとのことであった。

2例目:前立腺癌に対して、放射線治療を施行されている方。血便に対する精査目的の大腸内視鏡検査。日本と異なり大腸内視鏡検査も鎮静下に行うため、挿入時の疼痛に配慮する必要がないため、push主体の挿入をされていた。

3例目:食道癌術後の吻合部狭窄に対する拡張術。ブジーを用いて拡張術が行われていた。日本においてはバルーン拡張を行うことが多いと思われるが、モフィットがんセンターではコスト面でのメリットがあることより、ブジーを用いることが多いとのことであった。

4例目:直腸癌に対する化学放射線療法後、効果判定目的の大腸内視鏡検査。

モフィットがんセンターにおける内視鏡診療について

内視鏡室について

非常に広々とした空間に、準備室、リカバリールーム、説明室を兼ねた部屋12室を備えた前室と内視鏡手技室6室、洗浄スペース、医師室(写真④1-3)、病理標本作製室が機能的に配置されていた。(図)

内視鏡室(写真4)配置図

検査までの流れ

待合室から前室に患者と家族が呼ばれ準備をし、そのまま移動式のベッドで医師を待つ。内視鏡医、麻酔科医が部屋を訪問し、簡単な問診、検査の説明、同意の取得を行う。その後、ベッドごと内視鏡手技室へ患者を運び、検査の開始を待つ。麻酔科医が麻酔を導入した時点で内視鏡医が入室して検査を始める。

検査手技について

日本との大きな違いは、すべての検査処置を鎮静下で行うことである。鎮静は麻酔科医が担当し、プロポフォールとフェンタニルによる鎮静を行う。各内視鏡手技室には麻酔科医、GIナース(消化器専門看護師:RN)、検査技師が一名ずつ配置されており、内視鏡医を中心に役割分担しながら検査、治療を進めていく。スタッフの多さ、設備の充実度に日本(特に山口大学)とは雲泥の差があり圧倒された。

(外科 鈴木)食道がん手術見学

EG-junction部の食道腺癌に対して、腹腔鏡アプローチ(HALS)にてechelon flex60にて胃管作製、その後胸部操作に移り、胸腔内で奇静脈のレベルで食道切離し、機械吻合した。米国では基本的に腺癌が多いため(85%そのうち60%がEG-junction部, SCC:5~10%)2領域とのこと、しかも食道沿いもほとんど郭清はなしのため、腹部2~3時間、胸部2~2時間半で計5時間程度で手術は終了するとのこと。日本では胸部で食道を切離して胃側に引き出すため日ごろあまり見ない視野で興味があった。術前の化学放射線療法は50.4Gy~60Gy当てるとのこと。日本では明確なエビデンスなし。モフィットで1年間に140人診察して120人手術、そのうち70人をこの日の執刀のKen Meredith MD.が行う。執刀医とフェロー(専門医手前)の二人で行う。術中にDr.Meredithが切除標本を持って一旦手を下ろし、そのまま病理医のもとに持っていった。一緒に診断して再び吻合のため手洗い。日本では見ない光景で非常に参考になった。この1年半で吻合不全一人のみ、1996からの資料では全体のリーク率5%、彼は3%とのこと。(写真⑤1-2)

食道がん手術見学(写真⑤1-2)

2月9日(2日目) 

9:00~10:00

K. Nzuzi Gosinさんからのオリエンテーションとpaper work。守秘義務等事細かな誓約書が用意されており、それらの書類にサインした。

10:00~11:30

院内の見学

International support centerの見学

海外からの患者が治療、診療を受けるために必要な言語のサポート、支払いのトラブルへの対応などを行う部署。地理的な理由から、スペイン語圏からの患者への対応がほとんどとのこと。過去に日本から3名の患者が当センターに治療を受けに来られたことがあるとのことであった。(写真⑥)

Health care centerの見学

当センターで働く方々の健康管理を行う部署。簡単な投薬等はここでしていただけるとのことであった。

Research Building 内のlibraryの見学

小さい図書館であったが、Internet経由であらゆる文献にアクセス可能で、コピーもしていただけるとのことであった。

13:00~17:00

(内科 岡本)Dr. Strosbergのclinic(外来診療)を見学

腫瘍内科医であるDr. Jonathan Strosbergの外来診察を見学した。Dr. StrosbergはCarcinoid tumor、Neuroendocrine cell tumor (NET) 診療の権威で、各地から彼の治療を受けに患者さんが来られていた。日本では非常にまれな腫瘍の一つであるが、彼の外来には多くのCarcinoidおよびNET患者が治療を受けに来られており、非常に驚いた。

外来医は、基本的に電子カルテの閲覧や記録(医師はカルテの記述は自分では行わず、Dictationで行っていた)をする、Physician staff core roomに待機している。患者が診察室(写真⑦)に入ると医師がよばれ、診察室を訪問する形をとっていた。患者の待合室は日本の待合室のイメージとは全く異なり、患者および家族がゆったりくつろげるようになっていた。(写真⑧)

診察室(写真⑦) 待合室(写真⑧)

診察は、一人に対し10~15分程度で、日本との大きな違いは感じなかった。ただ、日本ではまだ臨床応用されていない新規抗癌剤が、当たり前のように使用されており、Drug lugの存在を痛感させられた。

1例目:Carcinoid tumorの患者。新規ソマトスタチンアナログの投与を受けておられた。

2例目:食道腺癌の患者。外科治療を受けた後再発され、それに対して化学放射線療法を受けておられた。

3例目:結腸のCarcinoid tumorの患者。手術を勧められていた。

4例目:Origin不明のCarcinoid tumor。多発肝転移、リンパ節転移の患者。サンドスタチンの投与を受けておられたが、CT上わずかに病状が進行していた。現状の治療を続行するか、現在行われているbevacizumabのNETに対する効果を見るphase III studyへの参加を提示されていた。患者様はphase III studyへの参加を希望された。

臨床試験への参加を決められると、医師がすぐに臨床試験担当のRN(Registered nurse)に連絡していた。5分ほどでRNが診察室に到着し、臨床試験へ参加するための手続きを行っていた。

5例目:Carney-Stratakis syndrome (GISTとglyomaの合併)の21歳女性。Nilotinibによる治療を受けていた。

6例目:アルコール性肝硬変、肝細胞癌の患者。肝動脈化学塞栓療法(TACE)が行われ、経過良好であったが、なぜか肝移植の相談をしていた。禁酒もしていないようであった。日本では、まずあり得ない治療選択で、違和感を覚えた。

Physician Staff Core Roomの見学

Physician Staff Core Room(写真⑨)

ここで、各科の医師(腫瘍外科医、腫瘍内科医、消化器内科医、放射線医、薬剤師、看護婦、Physician assistant)が集まり、症例を検討したり、電子カルテを書く作業をしたりする部屋がある。ここでは、各科の医者が集まって検討会を開いて具体的な治療方針が決定されたり、気軽に各科の医者同士がコンサルトしたりする。 (写真⑨)

Physician assistantという専門職について(分業化)

Physician assistantという職業は、日本にはない国家資格で、医師に代わり診察、投薬ができる専門職である。ただし、最終のチェックは医者が行いサインをする必要がある。このPhysician assistantのおかげで、医師の外来業務はかなり軽減されている。その他、資格のある看護師(RN:registered nurse)は、普通の看護師と異なり、さらに高度の教育を受け、高度の医療専門知識を持っており、試験に合格する必要がある。

(外科 鈴木)David Shibata MD. の外来を見学

Dr. ShibataはGI oncologyで下部消化管を扱い、遺伝子の研究もされており、かなり有名なDr.である。先祖は広島出身の日系2.5世 とのことであった。4月の日本外科学会ではアワードをもらったので来日して講演を行うとのこと。聴講しに行く約束をした。この日の患者は9人ですべて結腸・直腸癌、4人が術前であった。今回見学した外科外来は、全体を通じて術前の患者診察がメインで、診察Dr.の下にレジデントDr.とサウスフロリダ大学の医学生が付き、更に診察までにphysician assistantが患者の問診を行い、その後の手術予定についても詳細な連絡の責任を負っていた。非常にレベルが高く、医者と変わらない医療知識を持っているため、医者が指示を出すことなく、自分で必要な検査をオーダーし、診察後、医者に確認を取り、サインをもらう。一般的に手術当日入院(膵臓でも)で、術後5日程度で退院とのことであった。Dr. Shibataはダ・ヴィンチというRobotic Surgeryも行なっている。直腸には良いが、左半、右半には通常の腹腔鏡よりも時間がかかるとのコメントをいただいた。術後の抗癌剤治療を外科医が行なっている場面は全くなく、期間も短かったため、外科見学メインに終始してしまい、オンコロジストの活動はほとんど見学できなかった。

2月10日(3日目)

9:00~12:00

(内科 岡本)内視鏡手技の見学

1例目:総胆管結石の80歳代の患者。まず、コンベックス型超音波内視鏡(EUS)で総胆管を観察。胆管の軽度の壁肥厚と長径10ミリ程度の総胆管結石を認めた。Wire guided cannulationで総胆管にcannulationし、造影で結石を確認後、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を施行、バルーンカテーテルにて載石していた。最初にEUSを行うところが日本と異なっていたが、その後はほとんど同様の手技であった。この検査中に、患者のSpO2が突然低下(50台)するというトラブルがあったが、麻酔科医を中心としてチームで手際よく対処し、リカバーできていた。GIナース曰く、何があってもいいように常に備えているので問題ないとのことであった。

2例目:Vater乳頭部腫瘍の精査目的の患者。まず、パンエンドスコープにて食道と胃を観察し、EUSにて腫瘍の深達度診断を行い、その後側視鏡に持ち替えて、腫瘍からの生検を行っていた。生検の結果によって、内視鏡治療を考慮するとのことであった。通常、日本では範囲診断のためインジゴカルミン等の色素を用いた色素内視鏡観察を行うが、行っていなかった。理由を質問すると、コストや色素を調整する手間がかかるためという返答であった。

3例目:大腸癌に対する外科手術、術後化学放射線治療後の方の下部消化管内視鏡検査。直腸に潰瘍形成が認められ、再発が疑われたため、多数片の生検を行っていた。

13:00~16:00

前日に引き続き、Dr. strosbergのクリニックを見学。

1例目:胃GIST術後。imatinibによる術後補助化学療法を受けている患者。経過は良好であった。

2例目:膵臓の低分化なNETの患者。First lineとしてEtoposideとcarboplatinによる化学療法を受けていたが、resistantになりつつあるため、temozolomideとcapecitabineの併用化学療法を勧められていた。

3例目:切除不能食道腺癌の患者First lineとしてEtoposide, cisplatin, capecitabineによる併用化学療法を受けていたが、耐性になりつつあるのでcarboplatin, docetaxelの併用化学療法を行うこととなった。

4例目:小腸原発のNET患者。Octreotideによる治療を受けており病状はほぼ安定していた。

(外科 鈴木)7:00~手術見学

モフィットの手術は7時出しで始まり、日本より朝が早く、朝焼けの中を病院へ向かった。Department of Gastrointestinal OncologyのChairでありSection of Pancreatic OncologyのHeadであるMokenge P. Malafa, MDの肝切除を見学予定だったが、患者がインフルエンザに罹患し中止になったとのこと。腹腔鏡下のハーモニックスカルペルでの部分切除は見学できたが、開腹下の葉切除はどう行なうか大変興味があったため、非常に残念であった。代替手術の回腸導管後のストーマ閉鎖を見学、endoGIAを頻回に使用していた。

2例目はDr. Shibataのlaparoscope assisted high anterior resectionを見学、膀胱浸潤があり、泌尿器科の応援で小開腹創からの部分合併切除を行なっていた。このあたりの手術風景は日本と大差はなかった。(写真⑩Dr. Malafaと手術室にて)

2月11日(4日目)

7:00~9:00

GI tumor boardの見学(岡本、鈴木)

GI tumor boardの見学(写真⑪)

早朝より研究棟にあるDavid Murphey conference roomでGI tumor boardが開催されていた。早朝にもかかわらず、消化器領域に携わっている腫瘍内科医、内視鏡医、外科医がほぼ全員参加、放射線科医、病理医も参加し行われていた。13例の症例提示があり、画像所見、病理所見が提示され治療方針等について意見交換を行っていた。途中、Guest speakerによる講義が30分ほど行われていた。Boardの後に通常業務が行われるため、二時間できっちり終了していた。 (写真⑪)

9:00~10:30

(内科 岡本)内視鏡室にて手技見学

食道疾患の世界的権威であるDr. Worth Boyceの食道ブジーを3例見学した。食道癌の術後狭窄2名、および喉頭切除、voice plasty後の方一名に対してブジー拡張を行っていた。

11:00~11:30

Dr. Alan F List(写真⑫)

前述のHannibal Reikoさんの取り計らいで、モフィットがんセンターのVice Presidentである、Dr. Alan F Listと面会した(写真⑫中央)。 Dr. Listは骨髄異形成症候群(MDS)の世界的権威で、日本にも数回講演でいらっしゃったことがあるとのこと。トランスレーショナルリサーチの重要性などについて教えていただいた。 (写真⑫)

13:00~15:00

内視鏡部門にて内視鏡手技を見学

1例目:放射線性腸炎のため下部消化管出血を来している患者。下部消化管内視鏡を行い出血点を確認後、APCを行っていた。日本では発売されていない、全周性に凝固できるデバイスを使っていた。

2例目:上行結腸のSM深部浸潤癌。内視鏡的に明らかにSM浸潤のあるIIa+IIc型腫瘍に対して内視鏡治療を試みようとされていた。日本では未発売のneedle-free submucosal injecting deviceを使用していた。粘膜下に局注を試みていたが、案の定局注による挙上がみられず、断念されていた。内視鏡による深達度診断が多少おろそかにされている印象を持った。

15:30~16:00

Dr. Burthelとのミーティング

Barrett食道、Barrett腺癌についてレクチャーを受けた。Barrett腺癌は米国においてもっとも増加している癌の一つで、日本においても食生活を中心とした生活習慣の欧米化、肥満の増加等により、増加していくことが予想されている。Barrett腺癌発生には特殊腸上皮化生の存在が重要であること、近年策定されたプラハ分類が有用であること等をご教授いただいた。Dr. Burthelは最近、Barrett腺癌に対して化学放射線療法等を施行した後も発生母地であるBarrett食道の長さには変化がみられないことを報告されている。残存したBarrett食道に対してはPDTやAPCの報告があるが、術後の狭窄等が問題となっている。近年cryoabrationが臨床応用されているが、本法は他の手技に比べ術後の狭窄の危険性がほとんどなく、有用な治療法であると話されていた。今回、cryoabrationの実際を見学することができ、貴重な経験であった。

(外科 鈴木)9:00~Dr. Malafaの外来見学

1例目:明日手術予定の膵癌患者。腹腔動脈を巻き込んでおりneoadjuvantでchemo-radiation(小線源挿入)を行い、腫瘍縮小し肝転移も現れなかったため、手術予定となる。右肝動脈はSMAから分岐するタイプで、Applebyの手術には好都合だが、経過中に胃出血を起こしIVRでGDAをcoilingしているとのこと。背部痛もあるため、手術可能か術中判断に難渋しそうな症例でstaging laparoscopyを行なってから開腹するとのことであった。手書きの手術承諾書と輸血同意書をその場で取得していた。

2例目:HCV+のHCCで左葉切除予定の患者。ICG15はroutineで行なっておらずchild-pughで肝機能を判断するとのこと。日本ではICG15は肝癌診療ガイドラインでも術前肝機能評価因子としてグレードBで推奨されているため非常に驚いた。

3例目:幽門輪狭窄にて手術が必要かどうかsecond opinionを希望していた。

11:30~

Dr. Alan F Listと面会(岡本先生記述参照)

13:00~

senior adult tumor board

14:00~

4例目:男性で高位前方切除術後回腸ストーマを落とすため受診。比較的日本と比べてかなり高い位置でも人工肛門を造設している印象であった。これは太った症例が多いことと、皆保険でないため、リークを起こして入院が長くなることを防ぐためと思われた。

5例目:女性、腹腔鏡補助下肝S6切除術後。

6例目:中年女性、G cell hyperplasiaによるGastrinomaで精査の後にAntrectomy予定であった。

7例目:高齢女性で膵全摘の既往があり、今回新たに肝左葉にcholangiocellular carcinoma出現。Dr. Malafa はUSBにアナトミーピクチャーを入れて持ち歩き、患者に説明していた。

8例目:腹腔鏡下胆嚢摘出術後

16:30~

ミーティング Dr. Malafaからpancreatic tumor teamの紹介とtranslational researchに関するレクチャーを受けた。pancreatic tumor teamは外科医2名(1人がDr. Malafa、1人はリサーチ専門)、Oncologist1名、Endoscopist2名、Radiation Oncologist1名、Interventional Radiologist1名、Pathologist1名、緩和ケア専門医1名で構成されており、研究から臨床まで常にチームで分担しているとのことであった。

2月12日(5日目)

(外科 鈴木)9:00~Dr. Malafaの外来見学

標本チェック

1例目:膵体部の嚢胞に対する精査目的のEUS-FNA。嚢胞を穿刺し、内容物を吸引し細胞診に提出しようとしていたが、なかなか内容物が吸引されず、苦労されていた。日本では膵嚢胞性疾患の診断においてはEUS等による形態診断が重視されるが、細胞診を行うのはいかにも米国的だと感じた。

2例目:スクリーニングの下部消化管内視鏡検査

3例目:総胆管拡張の患者の精査目的EUS。精査により、傍乳頭憩室による圧排が原因と結論づけていた。

4例目:食道癌術後の患者。術後狭窄に対する拡張術(ブジー)を施行していた。

5例目:膀胱癌の治療歴のある患者。門脈周囲に腫大リンパ節があり、EUS-FNAを施行していた。特筆すべきはcytologistの存在で、連絡後5分程度で内視鏡手技室に駆けつけ、FNAで得られた材料をすぐに標本にして鏡検し、得られた標本が十分かどうかを評価していた。

6例目:膵体部の48×47ミリの腫瘤に対するEUS-FNA。やはり、cytologistが駆けつけ、標本のチェックを行っていた。(写真⑬)

7例目:大腸癌の肝転移病巣による閉塞性黄疸患者に対するERCP。ステント留置を行った。

(外科 鈴木)7:00~膵癌手術開始

まずstaging laparoscopyを行なうこととし、臍部を再消毒した後に反転し、トロッカーを挿入した。今後日本で広まるであろう臍を使った単創式手術の基本的操作が既に米国では広まっている印象を受けた。腹腔内を検すると肝表面に数mmの白斑を数箇所認めたため、腹腔鏡下にハーモニックスカルペルにて切除、病理部に移り凍結切片を作成し、実際に病理医と一緒にHamartomaであることを確認した。このシステムは非常に有用で日本でも実践すべきと考えられた。上記結果を受け、開腹術に移行したが、主腫瘍はSMA, SMVまで巻き込んでいたため、治癒切除不能と判断、経胃的に膵癌のバイオプシーを行い、閉腹となる。直前の画像診断が少し不足しているような印象を持った。水曜日の肝切除のキャンセルに続いて大変残念。Dr. Malafaのチームで年間200以上の膵癌患者に対応、そのうち手術適応は100超とのこと。

2例目は腹会陰式直腸切断術後の上行結腸癌に対する開腹右半結腸切除術。印象に残ったのは結腸間膜をリンパ節の1群2群関係なく腫瘍より少し離してGIAにてどんどん切離していき、回結腸動静脈の根部などは全く露出しなかった。米国では器械吻合器は何本使っても請求でき、むしろ手術時間で手術料が決まるので患者に とってはこの方がメリットが大きいとのこと。結腸癌の術後再発率の日米での違いがなぜ起きるのか理解できた気がした。

17:00~

K. Nzuzi Gosinさんによる簡単な総括があり、研修内容のアンケート等に回答し、研修を終了した。後日Visiting Scholarを送っていただけるとのことであった。

まとめ

Disney WorldとClear water beach にて(写真⑭) 今回、米国における消化器癌診療の実際を見学する非常に貴重な経験をさせていただいた。ただ、今回は外来診療の見学、内視鏡手技の見学、手術見学がほとんどで、施設全体の見学やシステムの説明、講義等の機会はあまりなかった。基本的には最初にスケジュールを渡され、後は自分で外来および内視鏡手技、手術手技を見学してくださいという感じであったため、多少不満足な部分もあった。当方の英語コミュニケーション能力にも問題があったため、あまり希望を伝えることができなかったのも原因であると考えられた。もう少し事前に準備をして研修に臨むべきであったと反省させられた。米国とは医療保険制度や医療費等に違いがあり、すぐに今回学んだことを本邦でも実践することは困難であると考えられる。しかし、米国で学んだ消化器内視鏡診療、消化器手術における患者へのアメニティの提供、リスクマネージメント等を少しずつ活かしていきコンソーシアム内での啓蒙に努め、チーム医療を発展させていく所存である。平日のみの滞在でしたが、Reikoさんの計らいで、オーランドのDisney world(ショッピング)とClear water beachを夕暮れ時から案内して頂きました。広すぎて車がないと動きが取れないなという印象です。

最後にこのような機会を与えてくださった中国・四国広域がんプロ養成コンソーシアムの皆様、山口大学 消化器病態内科学 坂井田教授、消化器腫瘍外科学 岡教授、がんプロのスタッフの方々に深謝いたします。

文責 山口大学 岡本 健志
鈴木 伸明

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