中国・四国広域がんプロ養成コンソーシアム

文部科学省 平成24年度 がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン 採択事業

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Grey Nuns Community Hospital, Royal Alexandra Hospital,Norwood Hospice Palliative Care, Cross Cancer Institute研修報告

研修期間:2010年8月23日~8月27日

参加メンバー
愛媛大学 青山 百合枝(看護師)、坪田 信三(医師)、永井 祥子(栄養士)、林 博美(看護師)
岡山大学 市原 英基(医師)、岡﨑 宏美(薬剤師)、西江 宏行(医師)、馬場 華奈己(看護師)、
松岡 順治(医師)
徳島大学 中屋 豊(医師)
姫路赤十字病院 石井 典子(医師)、仁熊 敬枝(医師)
報告者
愛媛大学 坪田 信三
岡山大学 西江 宏行、市原 英基
徳島大学 中屋 豊
姫路赤十字病院 仁熊 敬枝
研修内容
Rejional Pallative Care Program

エドモントン 報告 第1日

連日35℃前後の続いている岡山から100万人都市としては最北にあるといわれるエドモントンに到着した。第1日目、出発時の朝は気温が7℃で、岡山であれば冬の初めごろである。今回の参加メンバーは、岡山大学、愛媛大学、徳島大学、姫路赤十字病院から医師7名(松岡、中屋、仁熊、坪田、西江、市原、石井)、看護師3名(馬場、林、青山)、薬剤師(岡崎)、栄養士(永井)の12名であった。第一線で活躍中のスタッフばかりでしかも専門の異なる多職種が集まっており、どのような研修になるのか期待は高まるばかりであった。

第1日目のスケジュールはロイヤルアレクサンドラ病院でDr. Yoko Tarumiの講義であった。ロイヤルアレクサンドラ病院はエドモントンの中心にあり、急性期医療を担っている。救急がとても多い病院であり、またアルバータ州の北部には大病院がないため、飛行機やヘリコプターで救急患者がしばしば運ばれてくるそうである。Dr. Yokoは説明するまでもないが、日本の麻酔科、内科を研修の後、1999年からエドモントンで研修を行い、現在はスタッフとして活躍中の緩和ケア医師である。ロイヤルアレクサンドラ病院の緩和ケアチームを率いている。我々はDr. Yokoのおかげで十分に準備された研修をエドモントンで受けることができる。いつものように明るい笑顔で出迎えてくだり、見知らぬ土地でいくらか緊張していた我々はずいぶん癒された。

内容は、講義というよりも対話しながら話を進めていく形式で、飽きることなくすぐに時間が過ぎて行った。日本語で行われた。

まず12名が自己紹介をした。一人一人が自分の専門と、どういうことを学びたいかを答えていった。Dr. Yokoはそれらをすべてメモしていた。この自己紹介だけで早くも大いに盛り上がり、2時間弱は経過したように思う。次にカナダの医療制度の説明があり、午前中は終了した。
いくつか、重要だと感じたことを列挙してみると、

  1. 患者さんのthank you cardは主治医に行くようにすること
    緩和ケアチームは主治医をサポートするのが役目であり、主治医から感謝されるべきである。そうでないと次の紹介が来ない。
  2. 医師は、The college of surgeons and physicians という医師で組織された団体から厳しく監視されている。不適切な処方をしていると、連絡が来る
  3. カナダでは医療費が国と州で半分ずつ支出され、その額が決まっている。したがって、決められた予算の中で医療をしなくてはならない。国民はそのことを理解していて、医療費を使いすぎると医療が破たんするので、大事に使おうとする。

実は筆者はエドモントン訪問が2回目である。1回目は個人で訪問したが、すべて英語での研修であった。Dr. Yokoはその時、たとえ私と二人だけでいるときでも決して日本語を使わなかった。これは次にウィニペグでの研修が控えていた私のことを思ってしてくれたことである。しかし恥ずかしい話ではあるが今回の講義が日本語で行われたことにより、さらに理解を深めることができた。

ランチの後、午後の講義は「せん妄」についてであった。なぜせん妄を一番にするのか?大事な分野ではあるが、初めは不思議であった。その理由は、せん妄になると、患者さんが自分で意思決定ができなくなるからである。このあたり、カナダの国民が"autonomy"を重要視していることがうかがえる。そしてせん妄の50%は治せる病態でありその原因を調べることが必要である。せん妄は全身状態の異常による脳機能の低下であり、決して「おかしくなった」わけではない。このことを家族に説明しておくことも必要である。体の不調が原因となるので、せん妄の治療は内科医の仕事だそうである。
次は、オピオイドの話題になった。今後、日本では北米で用いられている多くのオピオイドが導入される。そのことから坪田のリクエストで実現した。
オピオイドの選択肢が増えることで日本でもますます便利になるであろうと考えていた。しかし意外にもDr. Yokoから発せられたのは注意喚起であった。メサドンはモルヒネの使用量を減らせる、神経障害性の痛みに効く可能性がある、安価であるなど利点は多い。しかし半減期の個体差が非常に大きいため使用が難しく、「メサドンライセンス」をもつ医師から処方されることが義務付けられている。また、フェンタニル舌下など、特に血中濃度が急速に変化する製剤は依存性が問題になりやすい。今後我々はオピオイドを使用するに当たり、十分に副作用のことも認識したうえで処方しないといけないだろう。奇しくも日本でフェンタニルパッチが慢性痛の適応となった際に、事故の報告があったばかりである。
Dr. Yokoはいつも笑顔で、friendlyである。彼女がロイヤルアレクサンドラ病院で緩和ケアチームを始めてから、紹介される患者さんはどんどん増えているそうである。カナダでスタッフ医師になるまでの道のりは平たんではなかったはずだ。困難を乗り越え明るくカナダで活躍するDr. Yokoには本当に感謝するとともに、同じ日本人として誇りに思う。
まだ時差ボケの残っていた筆者はホテルに帰るとすぐに深い眠りにつき1日目が終了した。

文責:西江 宏行(岡山大学)

2010.08.23(第1日目)
Tarumi Dr.よりlecure(終日)

Edomonton医療システムについて

  • public clinicはほとんどなく、アルバータ州からの予算5割、国からの予算5割により医療費をすべてまかなっている。

Edomontonの病院群

  • Royal Alexandra Hospital (RAH)とUniversity of Alberta Hospital (UAH)の2病院が中核病院
  • 地域病院として、Grey Nuns Community Hospital(GNC)およびMisericordia Community Hospital(MCH)を有す
  • その他、がんセンターとしてCross Cancer Institute (CCI: 40床)および高次緩和ケア病床そしてTertiary Palliative Care Unit (TPCU: 20床)を有する。
  • RedAH, UAHで合わせて3人の緩和医師が存在し、緩和外来初診が年間1000人程度
  • 初診はDr.が診察し、以後は原則としてNs practitionerがfollowを行う。
  • RAHの緩和で昨年は77%ががん患者、23%が非がん患者(COPD, IP, CHFなど)で非がん患者が増加してきている。
  • ホスピスとしては、全23床で3ヶ所に分かれて存在する。
  • ホスピスには、常駐の医師はなく、患者を入院させた家庭医(general physician:GP)が定期的に診察にあたっている。
  • ホスピスに入る基準は予後見込み2カ月未満だが、実際の入院患者の生存期間中央値は2~3週間、平均値で30日となっている。
  • 行政としてはホスピスへの移行をすすめたい。(1日あたりの入院にかかる費用 acute care hospitalでは3000ドル、ホスピスでは500ドル)
  • 昨年のEdmontonにおける全がん死亡3000人のうち、550人がホスピス、600人が在宅、残りがacute care hosopital (一部がlong term care hospital)で亡くなった。
  • 在宅死は3割が目標であったが、独居・核家族化などの問題から2割程度にとどまっている

Deriliumについて

  • Edmontonではderiliumは内科がみる疾患
  • 初回consulationを受けた時から、常にderiliumは念頭におき、mini mental state examination (MMSE)を行い、以後、週に2回ルーチンで行っている。2回目以降はDr.でなくNsが行っている。
  • ただし、MMSEはdementiaなどもpositiveになるため、MMSEをもってderiliumであるとは言えない。
  • TPCUでのderiliumのうち5割が非可逆性、5割が可逆性であった。
  • 治療可能なものの最多は薬剤性であり、その中でも特にオピオイドが多い
  • deriliumが疑われる時
    1. 病歴
      家族には具体的な質問をする(イライラしたり、不眠になってきていなかったか、空中をつかむような動作がなかったか、など)また、dementiaとの鑑別も必要となる。(孫など大事な人の名前が思い出せないことがあったか、帰り道に迷うことはなかったか、お金をおろせなかったことはなかったか、など)
    2. drug
      opioidによるderiliumが最多。脱水により、これまでと同量のオピオイドでderiliumを生じることも。その他、ベンゾジアゼピンも。また、アミトリプチンなど抗故林作用を持つ薬剤はすべてderiliumの原因となり得る
    3. physical
      発熱、SpO2など
    4. blood test
      低Na血症(脱水によるものなど)
      高Ca血症:prostateやLK (small)では少ない
      breast、NSCLC (特にsq), myelomaで生じやすい
      BUN/Cr
      肝機能
      sugar
    5. 感染を疑うなら血倍・尿倍
    6. 栄養状態
    7. head CT/MRI

Opioidについて

  • hydromorphine
    hydromorphineはmorphineの5倍の力価
  • ヒスタミンのリリースが少ないのでかゆみなどが出にくい
  • 胆道排泄
  • 便秘で再吸収されてしまうので便秘に特に注意必要

メサドンについて

  • モルヒネとメサドンの換算非は対数的に変化する
    →少量のモルヒネをメサドンに変えても利益なし
  • モルヒネを大量に使用しても、眠気や不随意運動などの副作用が出るばかりで、疼痛コントロールがつかない時にメサドンを考える
  • メサドンは半減期が6.8時間から120時間と個人差が非常に激しい
  • エドモントンではまず8時間毎から開始している
  • メサドンはCYP1AR, 2D6, 3A4と多くの酵素で分解されるため、種々の薬剤との併用作用が大きく、長期間、同用量で使用していても突然呼吸抑制がくることあり。→主治医、Ns、薬剤師を含め、何らかの薬剤変更を行う時は必ず連絡してもらうようにしている
  • メサドン経口10mg=静注8mgに相当
    (皮下注は痛くてできない)

文責:市原 英基(岡山大学)

エドモントン研修第2日目報告

Capital care Norwoodにおいて、カナダの緩和ケアについての説明をうけた。カナダでは急性期と家庭でのケアの中間的な公的な医療を行うシステムをCapital careと呼んでいる。2組に分かれ、Capital care NorwoodとRoyal Alexandra Hospitalの病棟見学を行った。

Capital care Norwoodは、高次緩和ケア病棟(Tertiary Palliative Care Unit、TPCU)を行うホスピス(Norwood hospice)の他に、急性期過ぎた患者および長期入院用の病棟を持つclinical complexである。Hospiceでは、9割ががんの末期の患者であるが、最近は、心不全、腎不全などの非がん患者の割合が増えてきている。ここでは強力な治療は行わずに、患者の症状の緩和、QOLの改善を目指している。必要であればsub acute care unitに移行し治療を行っている。Ventilator care unitでは、慢性的に人工呼吸器の管理が必要な患者が入院しており、ここでは長期間入院している患者も多い。Sub acute careの病棟では、急性期を経過した患者が入院しており、脳卒中後のリハビリなどの患者が多い。患者は自宅へ帰るか、あるいは長期療養の病棟へ移る。Wound careの病棟では褥瘡の患者、Traumaの病棟では急性期を過ぎた種々の外傷の患者の治療を行っている。

Capital careプログラムとして、急性期を過ぎた疾患で、しかしながら家庭では管理できない中間の状態をカバーする医療システムが構築されている。Alberta 州ではこのような施設が13あり、合計で1500人の入院患者を持っている。Norwood Hospiceはそのうちの一つの病院である。それぞれ病棟は、他の病院などから紹介により、順に入院を受け入れている。入院の順番は病状、社会的、経済的な背景を考慮して委員会で決定している。これらの病棟では、看護師がコーディネーターとなり、在宅移行への支援の実施や、自宅療養が望めない患者のナーシングホームへの移行支援も行っている。また、多職種専門家によるチーム医療の実践の解説と病棟見学を行った。

午後からはRoyal Alexandra Hospitalの緩和医療チームの活動を見学した。Norwood Hospiceからは地下トンネルがつながっており、冬でも移動ができるようになっている。緩和医療チームのRegistered Nurse (RN)およびNurse practionerによる患者の病歴、診察などを小グループに分かれ見学した。実際にEdmonton Symptom Assessment System (ESAS)、Mini-Mental State Exam (MMSE)、Palliative Performance Scale (PPS)などの評価スケールを用いてがん患者の状態を評価した。ESASは毎日経過を追っており、症状の変化が一目でわかるように、グラフ表示している。

文責:中屋 豊(徳島大学)

2010.08.25(第3日目)
Cross Cancer Institute Pain and Symptom Clinicにて

Dr. Watanabeよりorientation

  • Pain and Symptom Clinicはmultidisciplinary approachの形式をとっており、ほとんどが地域病院のoncologistからの紹介であり、多くがactive treatmentを受けている患者さんが対象となっている。
  • Team
  • dietitian
  • nurse
  • OT
  • pharmacist
  • physitian
  • psychologist
  • 言語療法士
  • social worker

ほか多岐にわたる

Triage

紹介は、Nsもしくはpharmacistが受けて、前もって電話で状況を確認する。状況が困難な患者を水曜日のmultidisciplinary approach形式の外来に予約し、その他はそれ以外の通常の外来で予約を行う。

follow up

  • telephoneで、通常は診察後、2回程行う
  • 症状コントロールが不良のようであったら再度受診してもらう
  • 症状が安定するまでhome doctorと連携する
  • その後、原則としてfollowはhome doctorに任せる
  • 主治医が診ていくことがもくひょうであり、home doctorへのpalliative careの教育および実践を目標とする

Schedule

  • 8:30-9:00 laboatory check
  • 9:00-11:30 team assessment
  • 11:30-12:30 team conference, 必要に応じて患者のX-P
  • 12:30-14:00 recommendation with Pt. and his family, implementation and teaching
  • 結果はhome doctorへfaxで返す

Clinicの見学

それぞれ各2人ずつに分かれて、各症例の外来を見学した。

●team assessment

assessmentは、日本の病院の個室の1.5倍程度はある十分な広さにベッドと椅子がおかれた非常に簡素な部屋であり、プライバシーは完全に守られていた。

我々が見学したのは、初老の喫煙者女性で進行非小細胞肺癌であった。御主人と2人で来院されていた。放射線療法を行った後、約2年間erlotinibの内服を行っていた。主な症状は顔面および右季肋部痛、嘔気であった。

assessmentは、事前に電話interviewで必要と考えられた各職種の担当が、順番に面接を行う形式であった。

今回は初めにOTによる面談が行われた。まず、初めにESAS、MMSE、PPSのスクリーニングが行われた。(スクリーニングは、どの職種が行うか決まっているわけではなく、最初に面談をする者が行っているとのことであった。)スクリーニング後、歩行や下肢筋力チェックなどを行い、全部で約30分で面談が終了した。その後、Social worker(約10分)、psychologist(約20分)、Nutritian(約15分)、Dr(約20分)の面談が続き終了した。

顔面の痛みについては、副鼻腔炎の可能性が考えられCTが要検討となり、抗ヒスタミン剤投与および神経ブロックがすすめられた。右季肋部痛については肋骨への転移の可能性から骨シンチが必要とのことであった。また、吐き気については、オキシコドンも使用されていたが、その前から出現した吐き気であり、erlotinib開始後からずっと認めていることからerlotinibによる嘔気と考えられ、制吐剤が必要とのことであった。

●team conference

別室でteam conferenceが行われた。見学時、検討されていた症例は我々が見学した患者ではなかったが、男性の非小細胞肺がんでやはりerlotinibやオキシコドンを使用していた。医師を中心とし、各職種がそれぞれassessmentしてきたことを順番に発表し方針を検討する形式であった。

Ethicsについてのlecture

Dr.Tarumiから行っていただいた。

  • 道徳と倫理の違いは何か
  • 道徳とは良いことを行おうとすることに対し、倫理とは正しいことを行おうとすることである。
  • ただし、正しさとは、人によって、環境によって、時間によって、常に変わり続けている。
  • かつて、cureのみを目的とした医療における倫理では、生存を延ばそうとする行為は、正しさであり、ある意味単純であった。
  • しかし、緩和における倫理は、もともとoutcomeが死であり、患者自身の価値観も身体状況によって刻一刻と変化すること、また場合によっては意識レベルが低下してしまうこともある、といった難しさがある。
  • このような状況の中で、それぞれの患者が自分にとって正しい道筋を選択してもらうためには、患者自身が自分の病気について正しく理解することが第一歩である。

2010年8月26日 木曜日(第4日目)

8月26日 9時00分から Grey Nuns Communitiy Hospital Dr. R. Fainsingerによる緩和ケアプログラムについて講義を受けた。この病院も非常にホテルと見間違えるような病院であった。GNHにはアルバーター地域の緩和ケア統括事務所がある。ここにこの地域の緩和ケアに関する連絡がすべて入るシステムがある。電話で患者の状態を調べ、緩和ケアスタッフによるチーム的介入を行うかどうかを決める。この事務所では地域の緩和ケアの医療資源状態を把握している。1995年、カナダの医療保険制度が破綻状態となった。主な理由として、急性期病院の治療費が非常に高く、急性期病院に患者が集まったことが一因であった。カナダでは緩和ケア病棟における医療費が安い。そのため、いかに急性期病院での治療の期間を短くし、緩和ケア病棟や自宅での療養を進める必要があった。

現在、患者の死亡場所は、急性期病院 40%、ホスピス30%、自宅は28%である。死亡の1年前までの療養場所は、86%は自宅、急性期病院 8%、3.5%ナースケアホーム、緩和ケア病棟は2.5%であった。患者は急性期病院で必要な処置を受け、直ちにそれ以外の施設に移る。患者・家族は、置かれた状態を理解し、また医療保険の状態を理解しているので、施設の移動に同意する。医療者は患者の診療録を医療圏全体で見ることができ、無駄な医療が生じないようなシステムである。効率よい医療を行うことで、現在、患者数は増加しているが、医療保険の状態は変わっていない。また、緩和ケアのコンサルトの結果、ホームドクター(医学部卒業生の約半数が選択する)、看護師にその結果を返すことが、緩和ケアの実践教育となるという利点もある。また高次緩和ケア病棟についての説明を受けた後、病棟見学を行った。日本ではまだ使用できないメサドンの特徴を教えていただいた。

午後からはsocial workerの役割について社会福祉士の大きな仕事の一つにspiritual care がある。患者・家族と療養について話し合い、介入を行うことは、患者の病気に関する理解、これからの予想経過など人生と向かい合うことである。この内容に関して患者のspiritual pain は避けて通れない問題である。また専門看護師の役割について講義を頂いた。アルバータヘルスケアに関して、多職種がそれぞれ評価を行い、その結果をもとに他の医療職と検討を行う。専門看護師はオピオイドの処方以外のことに関して指示を行う権限があり、その後の患者の経過をみるのも大きな役割である。

エドモントンで行われているオピオイドの皮下注に関して講義があった。シンプルな構造である機器(電気を使用しない)を用い、24時間ごとにオピオイドの使用量チェックを行う。静注は患者の負担(侵襲的)となる、費用の負担となるといった理由で一般的には行われていない。

カナダと日本では様々な医療制度の違いが大きく、直ちに取り入れるべきところと取り入れることができないところがあることがわかった一日であった。

愛媛大学麻酔科・蘇生科 坪田信三

2010年8月27日金曜日

Cross Cancer Instituteにて

Multidiscipliminary teamを構成する、それぞれの職種の専門家からその活動内容について説明を受けた。

1、 Dr. Sharon Watanabe:医師

疫学

アルバータ州 人口 3500万人
2006年の志望者のうち非癌患者13539人、癌患者5472人
多い癌:乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸・直腸癌

広い面積を少ない医療機関でカバーするための地域癌ネットワークがある(provincial cancer network)

●Cancer Care Centers は3種類

  1. 高次機能病院(Tertiary Centers)
    エドモントンとカルガリーの2箇所
    コンサルテーション、化学療法、放射線治療、標準の策定、研究、教育を行う
  2. 提携病院(Associate Centers)
    4箇所にある
    コンサルテーション、化学療法
    近年、これらの病院に放射線治療の機能をもたせることになり、準備中
  3. 地域病院(Community Centers)
    化学療法(ある種の、高次機能センターなどにコンサルテーションの上)
    * 地域で抗がん剤を処方するためには、①の施設で2週間の研修を受ける必要がある

●Cross Cancer Instituteについて

  • 4700人の新患患者
  • 外来患者へのサービスが基本
  • 副作用のマネージメントや抗がん治療のために59床のベッドがある
    * 化学療法は基本的に外来で(初回から)
    * 通院の必要があるが自宅が遠方で通えない人のために、泊り込むための施設やサービスがある。
    (コストは安く押さえられるようになっているようだ)

●痛みと症状コントロールのためのプログラム

目 的
CCIで治療している患者の癌に関する症状の治療についてオンコロジスト、家族、その他の医師、スペシャリストに対するコンサルタント的なサポート
設 定
週1回のmultidisciplinary クリニック(外来、入院患者とも)
方 法
紹介→トリアージュ(振り分け)→アセスメント→治療→落ち着くまで経過を追う→元の医師(家庭医)へ逆紹介を行う

●Community liaison clinic

より終末期に近づいた患者のためのプログラム

目的 
積極的な抗癌治療が出来なくなってきた患者に、緩和治療のための地域のサポートを確立することの手助け

●種々の集約

アセスメントツール
臨床的なガイドライン
・ ・・etc

など出のツールを統一することで、さまざまなデータを蓄積し、今後のことにつなげられる

2、 Ms.Amy Driga :Occupational Theapist(作業療法士)

リハビリテーションと痛みのマネージメント

● リハビリテーション医学

理学療法士、作業療法士、言語療法士

● 守るべきこと

予防的であること、元に戻せること、支持的であること

● アセスメント

強さ、可動性、知覚、バランス、協調性、筋緊張、機能

● 可動性の評価

入院患者の50%が理学療法士の歩行訓練を受けている

● 移動の訓練とアセスメント

ベッドから車椅子などへの移動が困難な場合は、最適の移動方法をアドバイスする

● エクササイズ

倦怠は72%の患者に診られ、何らかのマネージメントを必要とする
強さや機能を維持することで、倦怠を軽減できる
痛みのない範囲で行う
エクササイズをすることで前向きになる効果もある
歩行はもっとも進められるエクササイズである

● 腫脹

動きを阻害し、違和感がでる。
マネージメントの方法:pressure gradient compression system,
用手リンパドレナージ、空気圧迫法

● TENS

腰の痛みに使うことが多い

● 体のメカニズムについて

患者に体のメカニズムと、安全な動かし方、使い方、間接保護の方法などについて説明する

● 褥創のマネージメント

圧を減衰させる表面加工、臥位、座位の快適性、体位変換

● 気を紛らわせること

痛みへの注意をそらし、痛みに集中することを避ける

● リラクゼーション

筋緊張を取る、精神的にも有効、意識して腹式呼吸を

● リハビリテーションと薬の投与

リハビリによる不快感を減らすために必要ならば、適宜使用

● 言語療法士について

嚥下の評価

意思伝達の方法を考える

頭頚部癌の人では特に重要

3、 Ms.Patty Tachynski :Clinical Nutritionist

● Cross Cancer instituteの臨床栄養士は常勤・非常勤を含めて4人(常勤換算で2.8人分)

介入は入院、外来ともに行う。紹介は、医師、Ns, PTなど誰からでも受ける

● Pain and symptom clinicで行うこと

a) 栄養のスクリーニング、アセスメント、教育
b) 食欲と、食事のこと、体重の変化、そのほか咀嚼のこと、味のことなど
c) ゴール:食事、体重、熱量、全体としての強さを最適にすること
d) 栄養補助と代用食
*どんな食事を食べるべきか、どのぐらい食べるべきか

● 体重

体重減少とは  3-5ポンド(1.35-2.25kg)/1週間
        5%減少/1ヶ月
        10%減少/6ヶ月
10-20%以上の体重減少は臨床的に重要

● 食べることと嚥下のこと

嚥下障害、嚥下痛、口腔内乾燥、咀嚼(歯がないこと、義歯)、3日以上食べてないこと

● 輸液、水分負荷

● 食欲変化

味の変化、食欲の減退、少量での満腹感

● 便通の異常

便秘、下痢

● 栄養の介入法

  1. 高たんぱく、高カロリー食
  2. 適当な水分負荷
  3. 便通のマネージメント
  4. 代用栄養によるサポート(TPN, 経管栄養)
  5. 補助栄養食(エンシュア、ブーストなど)
  6. ビタミンと電解質

4、 Ms.Oceanna Hall :Spiritual Care Specialist

● スピリチュアルケアについて

美術療法士、心理療法士、ソーシャルワーカー、

スピリチュアルケアプロバイダーなどが行う

● 全人格をサポートする

● 心理学的なサポート

不安、うつ、人生の展望、コーピング、人生の満足度、適応

● ソーシャルワーク

医療保険のこと、健康and/or医療保険のこと、予約に対しての移送方法、患者と家族の滞在先のこと、個人的な気がかりの情報、病院からの退院についての計画、食事の手配、ライフラインの整備

● スピリチュアル/実存的(existential)なケア

スピリチュアルな苦悩を探査する、コープを再発見する 人生と死ぬことの意味を問う、超越したものとの関連を探査する、信頼を再発見する、倫理的な意思決定をサポートする、すべてを放棄する感覚を調整、個人的なスピリチュアルカウンセリングをおこなう

  • 癌は家族全員に影響を及ぼす
  • 苦悩の程度やサポートの必要性は、その病気の時期に応じて変化する。また苦悩は診断、治療、治療後、再発時、緩和治療を行っているとき、終末期のいずれのときにも生じる。それは個々に異なる
  • 多くの人は専門家がかかわろうとすると、心地悪さを感じる。自分のことを自分自身で処理できない、弱い人間と感じるからである。
  • しかし、癌患者本人、およびその家族はすべての人が、専門家のサポートを受ける資格がある
  • 宗教とは関係ないが、その人のバックグラウンドであり、そのことを考えながら、ケアを行っている

5、Dr. Sharon Watanabe :医師、Telehealthについて

遠隔地の患者にテレビビデオを通じて、診断と処方のアドバイスを行うもの。
患者の移動距離が長いため、このようなシステムを作った。
この2年間で23症例に行って、満足度はきわめて高い
地域のチームは患者、家族と地域のRN(レジスタードナース)
Cross cancer instituteのチームは緩和医療の医師と必要なメンバー
紹介理由でもっとも多かったのは痛みであった。

(感想)

以上の講義を受けた。
専門職は意識が非常に高く、活動性の高さが伺われた。
アセスメントツールはどこでも同じものを用いたり、データが全て共有できるようになっていたり、と地域で情報を共有するための整備が行われていた。自分の病院を振り返り、せめてアセスメントツールだけでも同じものが用いるようにできれば地域の連携がしやすくなるのではないか、と考えさせられた。

日本にはないスピリチュアルケアの専門職もあり、日本でもこのような職種の必要性を感じた。

受診機会に恵まれない患者へも的確なサポートが出来るようなテレヘルスシステムは、すべての情報を共有するのが難しい日本では、直ぐに真似することは難しいと考えられたが、将来的には地域によって導入が進んでゆけばよいと思われた。

文責:仁熊 敬枝(姫路赤十字病院)

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