中国・四国広域がんプロ養成コンソーシアム

文部科学省 平成24年度 がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン 採択事業

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Grey Nuns Community Hospital, Royal Alexandra Hospital,Norwood Hospice Palliative Care, Cross Cancer Institute研修報告

研修期間:2009年1月5日~10日

参加メンバー
愛媛大学 新居 由香(看護師)、武智 健一(医師)、長櫓 巧(医師)、福原 竜治(医師)、
光井 綾子(看護師)
岡山大学 齋藤 信也(医師)、長江 弘子(看護師)、名倉 弘哲(薬剤師)
香川大学 片山 陽子(看護師)、光岡 妙子(医師)、宮脇 有紀(医師)
徳島大学 川中 崇(医師)、長尾 妙子(医師)

中国・四国広域がんプロ養成コンソーシアムの一環として、2009年1月5日から5日間、カナダアルバータ州エドモントンで地域緩和医療提供システムと緩和医療教育の研修を受けてきましたので報告します。

出発前の日本では…

昨年の同研修プログラム参加者より、エドモントン緩和医療システムの充実と各専門職の知識や技術の高さについての報告を聞き、期待に胸を膨らませながらの出発準備となった。しかし同時に、想像できない零下20度の寒さを心配し、増える一方の荷物に頭を抱えることになった。

出発

正月気分も抜けない1月4日成田国際空港に集合した。今年は通訳のいないことが伝えられ、期待と英会話への不安を持ちながら機上の人となった。翌日ロサンゼルス国際空港で後発隊と合流し、岡山大学、愛媛大学、徳島大学、香川大学の計13名の2008チームエドモントン全員が揃い、一路エドモントンに向かった。

到着

カナダは飛行機から見ると広大で荒涼とした雪の世界であった。エドモントンへの到着は午後3時、外はすでに薄暗く夕闇がせまっていた。空港の外に出てみると、さほどの寒さではなかったが、油断して深呼吸すると気管支まで凍りつく空気が入り込み咳こむ有様であった。日本人が運転する専用バス(以後、移動時にお世話になった)でエドモントン市内に向かい、高層ビル群を見てエドモントンが大都会であることを認識した。この日はホテルでミーティングを行い、自己紹介をすませ、アジア料理を食べに街に繰り出した。

研修1日目(1月5日)

まだ、夜が明けない7時30分、時差ボケの目をこすりながら集合し、Grey Nuns Community Hospitalへ向かった。

この日は、Grey Nuns Community Hospitalでエドモントンにおける緩和ケアの概要及び高次緩和ケア病棟(Tertiary Palliative Care Unit、TPCU)について説明をうけ、病棟見学を行った。

エドモントンでは、すべての患者が緩和ケアを受けることのできる体制作りに加え、急性期病棟の削減、在宅医療への移行による医療費の削減を目的として、1995年からRegional Palliative Care Program(RPCP Program)が開始された。RPCP Programは、在宅(自宅)療養が基盤にある。患者の病状や病期に応じて、地域一般病院、ホスピス、がんセンター、TPCUが連携し、シームレスケアを可能にしている。TPCUは20床あり、在宅、地域一般病院から症状緩和困難な患者が紹介され、緩和領域でのICU的な役割を果たしている。入院患者の95%が担がん患者で、残りがAIDS、COPDやALSなどの神経筋疾患である。症状コントロールができればホスピスや在宅へ移行するが、60%の患者がTPCUで亡くなっている。医師(専門医3、レジデント2、フェロー2)、看護師(約40名、3人1組のチームで受け持ち制、ナース・プラクティショナー1名が病棟のスーパーバイザー)、ソーシャルワーカー、チャプレン、音楽療法士、薬剤師、理学療法士、作業療法士、心理士などの多職種専門家によるチーム医療が行われている。TPCUではEdmonton Symptom Assessment System(ESAS)、Mini-Mental State Exam(MMSE)、Palliative Performance Scale(PPS)などの評価スケールが用いられている。これらの評価スケールは簡便にできており、在宅、一般病院、ホスピスなどでホームケアチャートとして利用され、いずれの医療機関、職種でも情報を共有することができる。また、診療のほか、レジデントの教育、研究等も担っている。緩和ケア専門医になるには、2年間の研修が必要であるが、家庭医の資格を有する場合には1年間の研修でよい。以上の説明をうけた後、4グループに分かれ、レジデントの案内でTPCUの回診を行った。また、鎮痛方法として使用しているエドモントンインジェクターの説明や、緩和ケアにおけるスピリチュアルケアの講義をうけた。

1日目の研修は、恐れていたとおり英語づけの1日であった。1日中英語に耳を澄まし続けた疲労は、明日からの研修に差支えるのではないかと心配されたが、それでも空腹はやってくる。スーパーマーケットに買い出しに行き、1人では食べきれない食事を買い込みストレスを発散した。

研修2日目(1月6日)

昨日の英語ショックから十分に回復したかどうか不安であったが、なんとか8:30に時間どおり集合し、Norwood Hospiceに向かった。ここでまず、アルバータ州では緩和ケアをすべての疾患で早い段階から、すべてのアルバータ州市民が同等な医療サービスを受けることを目標としていると話された。主治医はすべて家庭医であり、緩和ケアも家庭医がコンサルテーションチームからサポートを受けて実施している。緩和ケア専門医が少なく、広大なカナダでは、家庭医が緩和ケアをできなければ成り立たないと説明された。

次いで、2クループに分かれ交互にRoyal Alexandra Hospitalと Norwood Hospiceでの説明を受けた。

Royal Alexandra Hospital(RAH)

札幌医科大学出身の樽見医師からカナダの医療制度について説明があった。

カナダでは、収入の約40%が税金として徴収され、医療費は、国税と州税による公費で賄われ、州が医療供給システムを計画、管理している。アルバータ州では入院医療の経費は全額公費負担であるが外来の薬剤費は自己負担である。

在宅緩和ケアプログラムにより、在宅医療の財源増加、地域コンサルテーションチームの設立、家庭医への報酬改善、教育の提供、がん以外の疾患への緩和ケアの提供が可能となった。10年間で在宅医療、緩和医療を受ける患者は増えたが、全体の医療費は増加していない。10年前は90%が病院で死亡し10%が在宅死亡であったが、現在の在宅死亡は20%に増加している。エドモントンでは独居、核家族が多く、家族の支援が難しく、在宅死亡は20%が限界ではないかと予想されている。ただ、死の直前ぎりぎりまで在宅療養をされている方は増えてきている。エドモントン市内のホスピスは59床あり、ホームケアの最期に1週間程度ホスピスに入院することも多い。ホスピスの入院条件は余命2か月以内であることとDo Not Attempt Resuscitation Order(DNAR)である。

RAHは北米でも有数の救急病院であり、救急にかかる初診の段階から緩和ケアコンサルタントチームにコンサルトされることが多く、各診療科で症状緩和の重要性が認識されている。

緩和ケアコンサルタントチームは、医師10人、看護師10人である。医師は全員アルバータ大学腫瘍学緩和ケア科に所属し、州内のあちこちに移動して診療に当たり、週末は1人の医師がオンコールとTPCUの回診をする当番制にしている。TPCU、ホスピスへの入院は、この10人の医師が決定している。コンサルト看護師は州のヘルスケアに所属し、内5名がCCT(地域コンサルタントチーム)メンバーである。

以上説明の後、ナース・プラクティショナーに同行し、診察の見学を行った。

Capital care Norwood

Capital care orwoodは、clinical complexであり、sub acute care unit、long term care unitなどがあり、Norwood hospiceと連携している。RAHとは地下通路でつながっている。患者の病状や疾患によって、病棟が決められる。hospice unitは長期療養を主とした施設であり、高度な医療行為は実施せず、必要であればsub acute care unitに移行し治療を行っている。看護師がコーディネーターとなり、在宅移行への支援の実施や、自宅療養が望めない患者のナーシングホームへの移行支援も行っている。ここでは、多職種専門家によるチーム医療の実践の解説と病棟見学を行った。

この日は、樽見医師の通訳により内容を正確に把握することができ、質問する勇気も出てきた。質問することにより更に理解が深まっていった。特に看護師チームは積極的であった。病院、ホスピスのスタッフの患者に対する温かい笑顔、私たちへの丁寧な対応に、私達は心温まる一日を過ごすことができた。夜は、メンバー全員で食事にでかけた。この日1日の研修の充実感と美味しい食事を友に緩和医療に対する熱意を語り、現状の問題を話し合いチームの団結力が深まった。

研修3日目(1月7日)

7:45に集合しCross Cancer Institute(CCI)に出発した。

CCIにおける緩和サービスについて概論講義をうけた。アルバータ州の人口は約350万で、2008年のがん患者は14900人おり、6100人ががんで死亡した。CCIは、3次のがん外来専門病院であり、がん患者の診断や治療方針を決定する目的で家庭医からの紹介を受ける。外来診療が中心であり、病床数は44床のみである。2008年には4700人の新患を受け入れている。CCIの緩和ケアサービスは、複雑な症状を抱える患者に対し多職種専門家チームにより半日かけてアセスメントし、チームカンファレンスを行い、緩和ケア医が治療方針決定する。この治療方針を地域のセンターへ報告し、家庭医、在宅支援チームに情報提供している。

講義の後、いろいろな職種の専門家による実際の診察とカンファレンスを見学した。その後、Palliative Care Telehealth遠隔システムの見学も行った。

最後に樽見医師が『ケアのゴールの設定が非常に重要であり、チームでアセスメントしてその時のプライオリティを定め、ゴールを設定し、プライオリティのリストをつくることから治療が始まり、病気が何かではなく、病期のどこにあるかが判断できることが大切であり、予後予測を行うことは治療過程において非常に重要なことである』と話された。

この日の夜はそれぞれグループに別れ食事に出かけた。

研修4日目(1月8日)

7:45に集合しUniversity of Alberta Hospital(UAH)に出発した。UAHはショッピングモールと見まがう立派な建物で、可愛らしい小児専門救急外来、朝食をしながらくつろぐ大勢の人の集うカフェテリア、さらにお土産コーナーまである。

午前中は、循環器領域での緩和ケアに関する講義を受けた。UAHでは、2008年7月から循環器疾患患者に対する緩和ケアへの取り組みを行っている。循環器疾患治療後(心臓外科術後、ステント留置後、心不全)に、痛み、錯乱、呼吸困難などの身体症状が残存する場合、治療で改善せず心不全の末期症状を呈する場合などがあり、症状緩和の積極的治療が必要な場合がある。オピオイドに関しては、循環器医師は使用に慣れていないためアドバイスしていく必要があると解説した。

この後、樽見医師により、「The pallium Palliative Pocketbook」を用いた緩和医療の臨床講義が行われ、せん妄、意識障害の診断・治療の重要性が述べられ、痛みの患者の症例討論を行った。

研修5日目最終日(1月9日)

7:30に集合しGrey Nuns Community Hospital に出発した。Stroke患者の臨床肺炎、誤嚥性肺炎についての講義を聴き、心理療法士、ソーシャルワーカーとカナダの医療体制、緩和プログラム、Grief careについての総括を行った。

この日の研修は午前で終了し、午後に巨大ショッピングモールへ買い物に向かった。ここで、斎藤サブリーダーはエドモントンの土地購入を進められ、少しその気になったような…。研修を終えた開放感でいっぱいの、お買い物時間であった。

夜は、ホテルのレストランで祝杯をあげた。長櫓リーダーから、一人一人に修了証が渡された。そして、苦労を一緒に乗り越えた仲間同士、互いの労をねぎらい、「2008チームエドモントンは最高だ!」と語り合いながら過ごした。

帰国(1月10日)

4:45に集合し、満月を眺めながら、帰国の途に就いた。日本に着いたのは夜、こちらでも同じ満月が輝いていた。国が違っていようとも、いかに医療システムが違っていようとも、患者さんの症状を緩和したいと思う気持ちは世界中共通のものだと感じながら家路についた。

今回の研修で、強く印象に残ったことは、エドモントンでは各施設が連携し継続性ある充実した緩和医療プログラムを提供されていること、そしてすべての医療スタッフが、緩和医療の必要性と内容について理解し、実践している事であった。研修を受けた私たちに課された責任は、このシステムの良い所をいかに日本、そしてそれぞれの地域で生かすかである。また日本の医療の良さも再認識でき、日本には日本にあった緩和医療の取り組み方があるような気がする。所属、職種の異なったメンバーが参加した今回の研修は、チーム医療を考える上でも、中・四国の地域連携を深める意味でも大変有意義であったと考えられた。

最後になりますが、エドモントンでお世話になった樽見先生他スタッフの皆様、がんプロ事務局の皆様、忙しい中研修にださせてくれた職場スタッフの皆様、2008チームエドモントンの仲間に心から感謝申し上げます。

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